ほくと移住者インタビュー|農業、狩猟、クライミング すべてがつながる 大中夫妻の黒森での暮らし。


今回の記事は、地域おこし協力隊による「ほくと移住者インタビュー」です。北杜市に移住した方を対象にお話をきいていきます。

第1回目は、2021年の夏に新潟から北杜市に移住してきた大中克敏さん、枝里香さんです。

黒森集落という市街地から離れた地域を移住地に選んだ大中さん夫妻には、とても興味深い理由としっかりとしたビジョンがありました。

まだ引っ越して数ヶ月にもかかわらず、強い思いと行動力で早くも地域になじみ、農業、狩猟、クライミングを中心としたユニークな生活を楽しんでいます。

インタビューの内容は、

  • 家はどうやって見つけたの?
  • 田舎の生活は不便じゃない?
  • 普段の買い物は?
  • 仕事はどんなことをしてる?
  • 地域にはすぐに馴染めた?

といった、移住を検討している人が気になるお話しをたくさん聞くことができました。とても参考になる内容だと思うので、ぜひ読んでみて下さい!

新潟から北杜市へ。移住の目的ときっかけ。

── 今日はよろしくお願いします。ではまず、大中さんが北杜市に移住を決めた理由やきっかけがあれば教えていただけますか。


大中克敏さん(以下、克敏さん) 僕たちは二人ともロッククライミング(ボルダリング)が趣味で、もともと瑞牆山(※)によく通っていたんです。だから移住を考えたとき、瑞牆山の近くに住もうということは決めていました。北杜市は瑞牆のふもとにある市なので。

※瑞牆山・・・北杜市から近いロッククライミングやボルダリングのできる山。日本で1,2位をあらそう人気のクライミングエリア。

 

── 新潟に住んでいるときは、どれくらいの頻度で瑞牆山を訪れていたんですか?


克敏さん ほぼ毎週通っていました、片道4時間かけて。休みが1日しかなかったので、深夜に出発して朝到着。昼くらいまで登って、それから新潟まで4時間かけて帰る。次の日は仕事しながら休むっていう生活をしていました(笑)

 

── 凄すぎる・・・(笑) 北杜市のなかでも黒森を選んだのは、やはり瑞牆から近いという理由ですか?

 

大中枝里香さん(以下、枝里香さん) わたしの希望でもあったんですけど、「家から瑞牆が見える場所」っていうのを一番に考えていました。周辺には他にいくつか集落があるんですけど、黒森は瑞牆のふもとで一番近く、しかもこの家から瑞牆が見えたので、「ここしかない!」と思って即決しました。


大中夫妻宅の縁側から見える景色。瑞牆山の岩頭群が見えます。

黒森集落について

増富温泉や、瑞牆山にほど近い集落。須玉ICから車で40分ほどの場所にあります。農業が盛んな土地で、近年では若い移住者が増えてきています。


黒森集落(グーグルマップの航空写真より)

── 実際に移住してみて、暮らしは変化しましたか?

 

克敏さん それはもう180度変わりました。さっきも話したんですが、新潟に住んでいたころは仕事のある日はふたりの時間がほとんどとれていなかったんです。寝る前に数時間くらいでした。夕飯も職場ですませるような感じで、普通の生活ができていなかった。

それが、こっちにきてからはガラリと変わって、朝昼晩とふたりで一緒にご飯を食べて、おしゃべりして。人間らしい生活ができていますね。

 

── 黒森ではどのようなお仕事をされるんでしょうか?

 

克敏さん 僕は料理人としてこれまで包丁を握ってやってきたんです。イチから作る料理、つまり材料から料理を作っていたんですけど、ゼロからは作っていなかった。こっちに来てやりたいことのひとつとして、肉だったら狩猟、野菜だったら農業をして、食材そのものを自分たちでつくったり獲ってくる。ゼロからの料理というのをしてみたいです。黒森は、瑞牆山を訪れる登山者やクライマーが通るので、そういう人たちに料理を提供したいなと思ってます。

僕が狩猟をメインでやって、こっち(枝里香さん)が農業をやる。それを料理して黒森だけで調達した料理を広めていけたらいいなと思ってます。

 

今年の夏からはじめた渓流釣りでとれたヤマメ。

枝里香さんが農業研修でもらってきた野菜から作ったソース。


枝里香さん わたしの場合、地域の人と関わっていくにはどうしたらいいんだろうって考えて農業をしようと決めました。彼は社交性があって、コミュニケーション能力が高いんですけど、わたしは口下手なのもあって、行動でしか信頼を得られないと思ったんです。だから黒森の産業である農業をして、地域の人に認めてもらいたいという気持ちがあります。

あと、わたしはもともと植物を育てるのって苦手ですぐ枯らしちゃうタイプだったんですけど、そういう苦手を克服したいっていう思いも最近は強くなっています。いまは自分の手で育てた野菜が美味しいって思えることがすごく嬉しいです。

 

黒森との出会い

 

── 農業を教えてくれる農家さんとはどうやって出会ったんでしょうか?

 

枝里香さん 今の農業研修でもある渡辺農場さんをインターネットで知って、コンタクトをとりました。「将来そちらに移住を考えています」と伝えて、今年の2月くらいにアポを取って、実際にお会いしたのが5月くらいかな。引っ越してきたのは8月中旬なので、かなりスピーディに決まりましたね(笑)

それ以外にも、北杜市の方にコンタクトをとって現地でお会いして話を聞くっていうのを3か月くらい続けました。

 

── 行動力がすごい。


家の前の畑。

 

克敏さん 田舎って、移住したものの地域に馴染めなかったって言う話をたまに聞くじゃないですか。黒森はまったくそんなことなくて、ものすごくウエルカムなんです。僕ら以外にも4組若い人たちが移住していたりして。

仲間がほしいと思っている人が多く、移住者を求めている。くらも黒森に住みたくて農業にも興味がある。そしたらもうとんとん拍子に話が進んで。「家はここがいいんじゃない?」なんて感じで紹介してもらったり。黒森には不動産屋はないけど、地域のコミュニティで移住者を受け入れようとしてくれるのを実感しました。

 

枝里香さん 最初は北杜市の街中の不動産屋に問い合わせたんです。「北杜市に移住を考えているんです」と伝えると、いろいろ教えてくれるんですけど、「黒森あたりが希望なんです」っていうと、紹介してもらえる物件はほとんどなくて。

実際には住む場所は見つかるので、その点に関しては落差を感じましたね。

 

自給自足のこだわりと、黒森だからできるライフスタイル。


克敏さん そうそう、仕事や事業とはちょっと違うんですけど、「自分で狩猟できるようになるまで、スーパーで肉は買わない」(頂きものはOK)と決めています。魚も同じで、今年から釣りをはじめたんですけど、イワナとかアマゴとかを釣って食べています。 

 

── すごく面白い生活!でもなかなかそこまでできる人っていないと思います。スーパーでの買い物の頻度も少ないんでしょうか?

 

克敏さん 黒森だとそんな人多いですよ。野菜も含めてスーパーで買うことはほとんどないんです。僕の場合は商品開発でパンを焼くためにバターとか小麦を買ったりするんですけど、普段の食事に関してはほとんど食費はかかってないです。

このあたりは自然栽培っていう方法で農業をしていて、要は肥料も農薬もあたえないんです。その土地の土壌の強さで野菜をつくる。人間はそのサポートをするだけなんです。

それでも大量に作物はできるんですけど、出荷に耐えられないようなものも多い。で、そういう野菜はどうするかというと、畑に返すんです。つまり、次のための肥しになるんです。出荷されない野菜ってみんなが思っている以上にすごい量があるんですけど、実はそういう野菜のほうが美味しいし、熟していて栄養価も高かったりする。そういう野菜をいただけるんで、スーパーで買わなくてもいいんです。

 

試作したパンはご近所さんにおすそ分け。

プチトマトはドライにして保存。


── すでに自給自足の生活ができているんですね。では逆に、黒森に住んでいて不便を感じることってありますか?

 

枝里香さん まだ一年を通して住んでいないのでなんとも言えないんですけど、正直ほとんど不便は感じていないですね。寒さに関しては、けっこうキツイんですけど、不便とは違うかな。コンビニも近くにないけど、それも不便とは思わないです。

 

克敏さん 隙間風があるんで、そういった意味では不安はあるんですけど、それも楽しみながらやっていこうかなと(笑)


古民家ならではの造り。


冬の備えとして、薪ストーブを導入。煙突工事もご自身でされています。


── では、田舎ならではのお付き合いとか、地域活動についてはどうでしょうか?

 

克敏さん 田舎ならではというか、まあ当然のように消防団や青年団には入る予定です。僕は40歳ですが、地域ではまだ若造なんで(笑)

 

── お話を聞いていると地域のなかに馴染んでいるようですが、なにか秘訣はありますか?

 

克敏さん とりあえず挨拶!目があったり、車ですれちがう時は頭を下げたり。そうしていれば、自然と受け入れてくれる地域なんです。

 

枝里香さん わたしは、あまり自分から話したりできないタイプなんですけど、向こうから話しかけてもらえました。隣のおばあちゃんが外にいたら「寒いねえ」みたいな、そんなおしゃべりをするだけなんですけど、凄く心地いいというか。夕飯の時間になると、「これあげる」って何かもってきてくれて、家の土間にある薪ストーブでいっしょに暖をとったり。

 

克敏さん 新潟のマンションに住んでいたころは隣の人の顔も知らないような状態で、近所付き合いなんて全くなかったんですよ。ここでは集落皆が知り合いで、家族構成からその人の食べ物の好みまで知ってますからね(笑)

 

── 黒森にきたからこそ味わえる生活ですね。

 

克敏さん 黒森にきてから太陽とともに生活しているという実感も感じています。陽が昇ったら起きて、陽が沈んだらもう外の作業は終わり。

 

枝里香さん あとはチャイムかな!12時になったら集落のチャイムが鳴って、お昼ごはんの時間。夕方も5時になったらチャイム。なんか学校みたいで楽しめてます。

 

克敏さん 3時くらいになると「小学生の下校の時間です」みたいなのもあるね。

 

家事、農業、狩猟、クライミング。すべてが生活のなかで繋がっている。

 

── 黒森の生活をとても楽しんでいるのが伝わってきます!お二人のように田舎生活を楽しむためのコツというか、意識していることはありますか?

 

克敏さん 不便を楽しむ、何でも自分でやって工夫することかなあ。農業にしても、

家を直したりする大工仕事も、仕事のように義務感でやるんではなくて生活の一部なんです。新潟にいたころは片道4時間かけて瑞牆に通っていたけど、今は15分で行ける。そしたらちょっと空いた時間で登りに行けるんです。クライミングが生活の一部になった。なにもないと思われている黒森で、生活は楽しめるんです。


 
自宅から15分で行ける岩場でボルダリング。


はじめに話したレストランも考え方は同じ。農業や狩猟を面倒な作業と考えないことです。黒森で作った野菜や、鹿の肉をつかった料理を、黒森(瑞牆)を訪れる人に味わってもらいたい。かっこよく言えば六次産業です。そのために今パンつくりの勉強で、黒森でとれたプチトマトで酵母を起こして作ってます。

今は須玉とか街の方にいかないと人が集まれる場所がないけど、黒森にそういう場所があったら地域も活性化すると思うんです。クライマーが集まれる場所とかあったらいいなあって(笑)

 

── 素敵な考えですね!では最後に、これから移住を考えている人にアドバイスなどあったらお願いします。

 

枝里香さん 移住って自分のやりたいことのためにすると思うんです。自分が納得できることをやるというか。だから、誰に言われたからこうする、とか、誰にこう言われたからやらない、ではなくて自分のやりたいことを突き詰めて、行動するのがいいんじゃないかなと思います。

 

克敏さん はっきり言ってやる気と行動力さえあればなんとでもなると思います。仕事も、家も、生活も。気持ちさえあればどうにかなるし、周りの人が助けてくれます。黒森はそういう土地ですし、僕たちもできることがあれば全力でサポートします!

 

編集後記

とてもエネルギッシュで行動力のある大中夫妻にお話しを聞かせて頂きました。自分たちのやりたいことを追求しながら、地域に馴染んで楽しく生活している。個人的には理想的な移住者の姿にうつり、インタビュー中も「いいなあ、いいなあ」を連発していました(笑)

そしてインタビュー後に大中さんのつくったスコーンをご馳走していただいたんですが、これがものすごく美味しかった!レストランがオープンするのが今から楽しみです!

移住定住と観光課の地域おこし協力隊では、不定期で移住者インタビューを行い記事にしていきます。これから北杜市に移住を考えている人だけでなく、北杜市民の皆さんにも新たな仲間として知っていっていただけたらと思いますのでよろしくお願いします!




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